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気胸で4回入院しながらアメリカの大学で論文を書いた話【GMU ASSIP】

ProgrammingResearch

病室で回帰分析を回す夏

「この夏なにしてたん?」と友達に聞かれたら僕はこう答えることにしました。

「病室で胸の中に管ブッ刺さりながら、膝の上にパソコン置いてアメリカの電力市場をPythonで回帰分析してた」

と。

今年の夏、僕は米国ジョージメイソン大学の夏季研究プログラム、Aspiring Scientists Summer Internship Program (ASSIP)に参加しました。

6月から8月まで、日本からのオンライン参加という形です。

結論から言うと、無事に最後まで走り切り修了することができました。

教授の本論文のメカニズムの最終実証モデリングと数理接続を担当して、教授と共著のAbstract・論文の執筆、学術誌への掲載(決定)、シンポジウムでのポスター発表まで行いました。

実績の裏側としては結構シュールで、なかなか疲れる夏休みでした。

怒涛のオーバーワーク 病気・時差・学校・研究

①気胸で4回の入院 + 2回の全身麻酔手術

まず一番の疲れた原因はズバリこれでした。

ここ1ヶ月、突然襲ってくる胸の激痛で病院に担ぎ込まれて管を通され処置を受ける日々を過ごしました。

結局この夏で4回入院し、そのうち2回は全身麻酔を使った手術でした。

麻酔から覚めて猛烈に眠い中でも「今日中にチームに共有しなきゃ」と点滴と心電図と酸素マスクに囲まれながらMacbookを開くという状況でした。

②アメリカとの13時間の時差

研究をしている米国ジョージ・メイソン大学のあるバージニア州(ET)と日本の時差は、13時間あります。

あちらの昼はこちらの夜、あちらの夜はこちらの昼です。

これは申し込む前から少し考えれば分かることなのですが、申し込むまで時差の存在を忘れていました。

ミーティングやセミナーは深夜1時や2時に開催することがザラで、生活リズムを保つだけで一苦労でした。

③容赦ない通常の学校生活

インターン期間中であっても、当然ながら日本の高校生としての日常は続いています。

昼間は学校に行って授業を受け、帰宅してからはアメリカモードでミーティングや研究作業に入ります。

夜まで作業をした後、翌朝何事もなかったかのように学校に登校します。

「あれ、いつ寝ようかな??」と悩むスケジュールが続きました。

④「遊び」ではなく「研究」に捧げた夏

考えてみれば「遊ばない」夏休みは生まれて始めてでした。

周りの友達は旅行に花火大会、部活に汗を流したりと夏休みをガッツリ満喫している中、私の夏は「病院のベッドの上」「学校」「自宅のデスク」という三点を行き来するスケージュールで埋め尽くされました。

世間一般の「青春」的な夏休みではありませんでしたが、最高の研究に没頭できた意味で、決して消えたのではなく、どこよりも濃密で充実した夏でした。幸せ者です。

研究の具体的内容

私が参加したのは、GMUのJiasun Li教授が主導するラボの分散コンピューティング経済学のプロジェクトです。

テーマを一言で言うと、

「ビットコインのマイニングとAIデータセンターは、電力市場の逼迫に対してどれくらい柔軟に電源をオフして電力系統に貢献し、二酸化炭素を減らせるか?」

というもの。

まさに今、世界中で議論されている最前線のトピックです。

その中で私が任されたのが、チームの最終的な実証分析を担う定量検証モデルの構築をする役割です。

教授が提示する数理モデルと、実際の巨大な電力市場データを接続する極めて重要なパートでした。 

具体的には、病室のベッドの上で次のような作業を没頭して進めていました。

・17,483件の巨大パネルデータの解析

テキサス州電力信頼性評議会(ERCOT)の2022年〜2023年にわたる1万7千件超の時系列データを結合し、Pythonを用いて解析を行いました。 

・計量経済学手法を用いた統計処理

時間帯や月による変動ノイズを制御するための固定効果(FE)を投入し、さらに不均一分散を補正するHC1(頑健標準誤差)を用いたOLS(線形確率モデル)を実装しました。 

・堅牢性チェック

マイニングの損益分岐点として設定した$122/MWh以外にも$80、$160、$200と閾値を変化させても、残余需要が電力逼迫を正確に予測できることを確認しました。

・電力、CO2削減シミュレーション

仮説的な100MWの計算負荷モデルを構築し、暗号資産マイニングなら約10万MWhの電力削減と、2.5万〜7万トン規模のCO2排出回避の可能性があることを示しました。AIデータセンターの場合も同様にシミュレーションを行い、大きな効果を確認しました。

大変な日々でしたが、自分が書いたコードと構築したモデル(B2.4)が、研究チームの問いにクリアな回答を与えていくプロセスは、何物にも代えがたい快感でした。

研究の詳細な内容は別の記事に書く予定です。

走り切って得た成果と見えた景色

昨日、最終イベントであるポスターシンポジウムが無事に終了し、私のGMU ASSIPでの夏は一区切りを迎えました。

病室のベッドの上でパソコンを叩いていたあの日々は、ただの「大変だった思い出」ではなく、以下のような確かな成果として残りました。

・教授の本論文に対する実証モデルの完成

・共同著者としてAbstractを執筆

・大学公式の学術誌JSSRへの掲載決定

・チームでのポスター発表の成功

・大学の単位3単位を獲得

また現在も、自分の名前が入った本論文の執筆が進行しています。

振り返ってみると、今回の経験で得た一番の学びは、

「どんな環境であっても、好奇心とPC一台さえあれば、世界の最前線の研究に直接貢献できる」

という強い実感でした。

気胸での入院と手術は間違いなく想定外のアクシデントでした。

しかし、点滴を受けながらデータと向き合った経験は、私にとって一生物の自信とやり抜く力を与えてくれたと思います。

研究を導いてくださったJiasun Li教授やチームのメンバー、何より体調面を支えてくれた医療従事者の方々や家族に、心から感謝しています。

まずはぐっすりと眠りたいと思います。

Ryo

Ryo

CS好きの高校一年生。現在は米大学のラボでエネルギー制約下の分散コンピューティング経済学の研究をしています。